「宇宙戦艦ヤマト」関連裁判の判決

最終更新日: 2010/11/09

「ヤマト」関連の裁判について、これまでに出た判決のポイントを簡単にまとめてみました。

■ 商標権裁判 ■

H12. 9.28 東京地裁 平成11(ワ)18820等 商標権 民事訴訟事件
平成一一年ワ第一八八二〇号 商標登録抹消等請求事件
平成一二年ワ第一七七〇号 独立当事者参加申立事件
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【登場人物】

脱退原告西崎氏の破産管財人
参加人東北新社
被告西崎氏の長男

【あらまし】

西崎氏の長男は西崎氏から破産の前後にタダで商標権をもらった。 ところが、それ以前に西崎氏は著作権もろもろを東北新社に譲渡していた。 この契約の対象には商標権も含まれるから、その商標権が長男に譲渡されるのはおかしい、ということで裁判沙汰に。

【判決】

第一審では被告(西崎氏の長男)の敗訴。 商標権は東北新社へ。

【ポイント】

西崎氏、著作権のみならず商標権や意匠権やなんかも東北新社に持っていかれた。 商標権だけは長男に託して守ろうとしたみたいだけど、結局失敗。

ただし、西崎氏には「2520」を制作する権利、将来著作権を買い戻す権利などが留保されていること、などが判決文の中で触れられている。

【その後の状況】

第一審の判決で確定、、、かな? 控訴したという話を聞かない。

■ PSソフト裁判 ■

H13. 7. 2 東京地裁 平成11(ワ)17262 著作権 民事訴訟事件
平成11年(ワ)第17262号 著作権損害賠償等請求事件
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【登場人物】

原告西崎氏
被告バンダイ、バンダイビジュアル、東北新社

【あらまし】

西崎氏がプレステのヤマトゲームについて、著作者人格権の侵害を理由に損害倍賞を求めた。

【判決】

第一審では原告(西崎氏)の敗訴。

【争点】

あの裁判における争点は(賠償額を別にすれば)次の3つ。

(1) 「ヤマト」の著作者は西崎氏個人か、それともアカデミーやウェストケープなどの法人か。
(2) 西崎氏は、著作者人格権に基づく請求権を放棄し、3社らが改変を加えることなどについて承諾したか。
(3) 西崎氏が著作者人格権侵害に基づく請求をすることは信義則違反か。

【ポイント】

判決の理由は二つ。
一つは、争点(2)について、西崎氏側の主張が立証されなかったこと:

  • 一切の著作権は東北新社に譲渡された
  • 西崎氏は著作者人格権を「著しく侵害」されない限り行使しないことに同意したと解釈できる
  • 西崎氏は著作者人格権を著しく侵害されたことを立証してない
   →ゆえに西崎氏の請求はバツ

もう一つは、争点(3)について、譲渡契約時の西崎氏側の説明に問題があったこと:

  • 西崎氏側は譲渡契約のときに東北新社に「著作者はウエストケープとアカデミー」と説明した
  • 後で「著作者は西崎氏」を根拠に因縁をつけるのは、信義則に反する
   →ゆえに西崎氏の請求はやっぱしバツ

【補足】

この判決では争点(1)の「ヤマト」の著作者が誰であるかについては判断を下さなかった。 この点については、わざわざ「判断しない」と断り書きが入ってる。

1 争点(2)及び(3)(請求の放棄,信義則違反)について判断する。
(中略)
ウ 上記いずれの理由によっても,被告らの争点(2)及び(3)に関する主張は相当である。
2 以上によれば,その余の点を判断するまでもなく,原告の請求は理由がない。

その手前に
「原告は,アニメ作品の制作等を業としていたが,昭和49年から58年に掛けて,テレビないし劇場用映画である本件各著作物を制作,著作した」云々、
という記述はあるものの、これはあくまで活動内容について述べただけで、著作者が個人か法人かについては何もいっていない。

【その後の状況】

原告側は控訴したけど、2004年5月28日に和解

■ 著作者裁判 ■

H14. 3.25 東京地裁 平成11(ワ)20820等 著作権 民事訴訟事件
平成11年(ワ)第20820号 著作権侵害差止等請求事件
平成12年(ワ)第14077号 著作者人格権確認反訴請求事件
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【登場人物】

原告松本氏
被告西崎氏

【あらまし】

西崎氏は「ヤマト」の著作者は松本氏ではなく自分であるとして、雑誌やWebサイトを通じて松本氏批判を展開していた。 これに対して松本氏は、自分が「ヤマト」の著作者であるとして、西崎氏を著作者人格権侵害と名誉毀損で訴えた。 西崎氏も自分が著作者であることの確認を求めて反訴した。

【判決】

第一審では原告(松本氏)の敗訴。 著作者は西崎氏だという判断。

【ポイント】

著作と原作について判断された。
まず著作者が誰かということについては、西崎氏の主張がほとんどそのまま通った格好:

  • 西崎氏は「ヤマト」製作過程の全体に創作的に関与した
  • 松本氏は西崎氏の意向に従って一部分を担当した
   →ゆえに西崎氏が著作者である

それから原作については「ない」ということになった:

  • 「ヤマト」には「視覚化された原作」は存在しない
  • 「ヤマト」は西崎氏らの企画書をベースにしたもの
  • 松本氏の参加はこの企画書ができた後である
  • 松本氏の「創作ノート」「第1企画書」「冒険王版ヤマト」「電光オズマ」などは原作とは認められない
   →ゆえに松本氏は原作者ではない

最近の目立つ判例として、他にもあちこちのWebサイトで取り上げられてるので、そちらの解説もぜひご一読あれ。

【その後の状況】

原告側はこの判決を不服として控訴したけど、2003年7月29日に両者が訴えを取り下げ、裁判外の和解が成立した。
# 第一審判決確定ではない

■ パチンコ裁判 ■

H18.12.27 東京地裁 平成16(ワ)13725 著作権 民事訴訟事件
平成16年(ワ)第13725号 損害賠償等請求事件

同日、同法廷での判決:
H18.12.27 東京地裁 平成17(ワ)16722 著作権 民事訴訟事件
平成17年(ワ)第16722号 損害賠償請求事件

以下では、主に前者(平成16年(ワ)第13725号)について記述。

【登場人物】

原告東北新社
被告三共、ビスティ、カード・システム、
アニメーションソフト(旧ベンチャーソフト)
被告補助参加人零時社、松本氏

【あらまし】

準備中。

【判決】

第一審は原告(東北新社)の敗訴。

【ポイント】

準備中。
とりあえずこれ↓がわかりやすいんでご紹介:
駒沢公園行政書士事務所日記 「宇宙戦艦ヤマトパチンコ」事件

【その後の状況】

平成19年1月5日、東北新社が控訴した。
平成20年12月15日、両裁判の原告である東北新社と被告である計5社とが和解したことが公表された。5社の一部が東北新社に2億5千万円の和解金を支払った。当事者間の合意によって、和解金の主旨など詳しい内容は公表されなかった。

■ まとめ ■

司法の判断としては、いまのところこんな↓感じにまとめられます。

著作者?(判決では西崎氏→和解では両氏の共同)
原作者?(判決では「存在せず」→和解では言及なし)
著作権者?(和解では東北新社ということで一応決着)

# ただし、松本氏のコミックについては明らかに松本氏が著作者
# これはアニメ作品の二次的著作物ってことになる

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