東北新社への「ヤマト」著作権譲渡契約最終更新日: 2007/01/27 |
1996年12月20日、西崎義展氏から東北新社への、「ヤマト」著作権の譲渡契約が締結されました。 この内容は、本来はおそらくおおっぴらに公開されるようなものでもなかったしょう。 しかし、判決文の中で断片的に言及されています。 このページにはそれらの断片をまとめてみました。 なお、この譲渡契約書の草案は東北新社側の森伊津子弁護士が作成したものです。 ただし、別紙(一)〜(三)は契約に先立ち、当時のウェストケープ社員であった小森伸二氏が西崎氏の指示により作成したものです。 詳しくは契約前後の状況をご覧ください。 | |||||||||||||
このページはあくまで判決文中から断片的な言及を抜き出してまとめたものですから、これが譲渡契約書の全てではありません。 また、判決文の中で「被告」や「原告」「P2」などとなっているところは、実際の譲渡契約書の中では「甲」や「乙」などと書き表されているようです。このページでは、適宜「東北新社」や「西崎氏」などに置き換えています。そのため、「甲」「乙」表記と人名・社名表記が入り混じっています。 | |||||||||||||
■ 契約の内容 ■ | |||||||||||||
前文株式会社東北新社フィルム(以下「甲」という),西崎氏(以下「乙」という),株式会社ウエスト・ケープ・コーポレーション(以下「丙」という),株式会社ボイジャーエンターテインメント(以下「丁」という)とは,以下のとおり合意した。 | |||||||||||||
第1条 定義
本書において用いられるとき下記の用語は下記の意味を有する。 | |||||||||||||
第2条 譲渡
乙は甲に対し,対象権利および権利行使素材の所有権の一切を,本書の日付をもって譲渡し,甲は乙からこれを譲り受けた。但し,対象権利と権利行使素材のうち将来作品に関するものについては,それらの完成を条件に乙は甲に対し譲り渡し甲は乙からこれを譲り受けた。 | |||||||||||||
第4条
西崎氏及びウエストケープ社及びボイジャーエンターテインメント社が対象作品について第三者との間で締結した契約について,契約上の地位を東北新社に譲渡する。 | |||||||||||||
第5条 著作権登録
乙は,現存作品に関する著作権の乙から甲に対する譲渡についての著作権登録を本契約締結日から三か月以内に行う。 | |||||||||||||
第6条 対価
甲は,乙に対して,本契約上行われる一切の譲渡その他の乙の義務履行に対する対価として金450,000,000 円(消費税別)を分割して以下の期日に乙の指定する銀行口座への振込みにより支払う。 下のような表がある。
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第7条 追加対価の額と支払
1.甲は乙に対し,第6条記載の対価の追加対価として下記の金額を支払う。 | |||||||||||||
第9条 保証および免責
1.乙は,甲に対し,下記を保証する。 | |||||||||||||
第10条 キャラクター使用作品
対象作品に登場するキャラクター(人物,メカニック等の名称,デザインを含む)を使用し新たな映像作品(但し,キャラクター使用以外の行為で対象作品の著作権を侵害しないものに限る)を制作する権利は乙に留保されるものとし,その場合のM/D権その他の権利の運用については別途協議とする。但し,乙は制作の一か月前までにその内容の詳細を書面で甲に通知する。 | |||||||||||||
第12条 連帯保証
丙および丁は,本契約に基づく乙の甲に対する一切の債務の履行につき乙と連帯してその履行の責に任ずる。乙,丙および丁は,丙および丁が本契約を締結することにつき,取締役会の承認を取得済みであることを甲に対し確認する。 | |||||||||||||
別紙(一)
下のような表がある。
なお、この契約書のウエスト・ケープの記名捺印欄には、代表取締役として西崎氏の記載がある。 また、著作者・製作者・著作権者の表示は、言及されている限りでは次の通り。
# おそらく、著作者と製作者は全て同一で、 | |||||||||||||
別紙(ニ)キャラクター権、プラモデル権などが対象権利に含まれることが記されている。 | |||||||||||||
別紙(三)この中には「宇宙戦艦ヤマトシリーズのM/D,ゲーム化権の西崎・松本両氏の印税配分」などの欄があり、 作品毎の契約のため,現在明確な取決めがない。従って,西崎氏が責任をもって両者分を10〜15%の間で1997年2月28日迄に協議の上決定する。 とされている。 | |||||||||||||
■ 契約前後の状況 ■各判決文から、この譲渡契約が締結された前後の状況についての記述を抜き出して、なるだけ時間的順序に一致するように並べ替えてみました。 ただし、裁判によって「原告」「被告」が違ってて、それらからの引用を混ぜると紛らわしいため、「西崎氏」「東北新社」などに適当に置き換えてあります。 西崎氏は,平成7,8年ころ,一連の「宇宙戦艦ヤマト」シリーズの新作「宇宙戦艦ヤマト・復活編」の製作の準備を進めていたが,その製作費の資金繰りに窮していた。西崎氏は,平成8年2月ころより,被告東北新社に対して,出資を要請し,西崎氏の有する著作権等の譲渡のための交渉を重ねた。(PSソフト裁判) 東北新社は,平成8年9月ころから,西崎氏との間で,宇宙戦艦ヤマト作品等の著作物の著作権を譲り受けるための交渉を始め,(パチンコ裁判) 西崎氏は,緊急に資金を必要としたために本件譲渡契約の締結を急いだ。 そのため,被告東北新社は,自ら,本件譲渡契約の対象となる作品についての十分な調査をすることができず,西崎氏に対し,対象作品に関する詳細な情報提供を要請した。そこで,西崎氏は,本件譲渡契約の対象作品に関する権利関係等を明らかにした別紙(一)ないし(三)の書面を作成した上,被告東北新社に交付した。なお,上記各書面は,当時ウエストケープ社に勤務していた小森伸二が西崎氏の指示を受けて完成したものである。(PSソフト裁判) 被告東北新社は,それまで独自にした調査の結果と西崎氏が示した前記書面との間に特段の不一致がなかったこともあり,本件譲渡契約締結に応ずることとした。(PSソフト裁判) 甲3契約書の草案は森伊津子弁護士(以下「森弁護士」という。)が作成した。(パチンコ裁判) 本件譲渡契約は,被告東北新社の西崎氏に対する出資契約と不可分一体のものであったところ,同被告は出資契約を締結しようとせず,西崎氏を資金不足に陥らせた。そのため,西崎氏は,「宇宙戦艦ヤマト・復活編」の製作の資金繰りに窮し,資金工面を急ぐあまり,問題点の残された本件譲渡契約を締結せざるを得なかった。(PSソフト裁判、ただしこの部分は西崎氏側の主張) 西崎氏は,平成8年12月20日,被告東北新社との間で,自らが代表するウエストケープ・コーポレーション(以下「ウエストケープ社」という。)及び訴外株式会社ボイジャーエンターテインメント(以下「ボイジャーエンターテインメント社)という。)をも当事者として,本件各著作物に係る著作権を対象とする譲渡契約(以下「本件譲渡契約」という。)を締結した。(PSソフト裁判) 本件譲渡契約締結後も,被告東北新社は依然として出資契約を締結しようとしないばかりか,契約書の問題点の改善を求める西崎氏の要求にも応じようとしなかった。(PSソフト裁判、ただしこの部分は西崎氏側の主張) 甲3契約対象作品の著作権譲渡登録が,甲3契約締結日から3か月以内に行うことと合意されたことから,東北新社は,平成9年3月に至り,上記著作物の著作権の譲渡登録の手続をしようとしたところ,甲3契約対象作品のうち,本件P3経由著作物の著作権については,平成8年11月25日付けで,西崎氏からP3への譲渡登録がされていることが判明した(なお,本件映画は,本件P3経由著作物に含まれている。)(甲1の1ないし9,31,32の1ないし9)。そこで,東北新社は,西崎氏に,上記の譲渡登録がされていることについての説明を求めたところ,西崎氏から,宇宙戦艦ヤマト作品の著作権はP3に預けてあるだけであるとの説明を受けたことから,森弁護士と相談し,その結果,本件P3経由著作物の著作権については,P3から東北新社へ譲渡登録をする形をとることとし,その旨西崎氏に連絡して,西崎氏の合意を得た(甲31)。(パチンコ裁判) その後,東北新社は,P3に対して,甲3契約対象作品のうち,本件P3経由著作物についての,平成9年3月26日付け著作権譲渡証書(本件P3譲渡証書)2通を作成させ,同人からその交付を受け,西崎氏に対しては,甲3契約対象作品のうち,本件P3経由著作物以外の著作物についての,平成9年3月26日付け著作権譲渡証書(以下「本件P2譲渡証書」という。)を作成させ,同人からその交付を受けた。そこで,東北新社は,平成9年3月26日,文化庁長官に対し,上記各著作権譲渡証書を添付資料として,甲3対象作品についての著作権譲渡登録の申請をし,その結果,平成9年11月19日付けで,本件P3経由著作物については,P3から東北新社への著作権譲渡登録が,それ以外の甲3対象作品については,西崎氏から東北新社への著作権譲渡登録がそれぞれされた(甲1の1ないし9,31,33の1及び2,34)。(パチンコ裁判) そして譲渡契約に基づく双方の義務は履行された。ところが,平成9年9月16日,西崎氏に対する破産宣告がされ,破産管財人が選任された。その後,平成11年6月ころに至って,破産者である西崎氏は,被告東北新社に対し,本件各著作物を著作したのは西崎氏であるから著作者人格権を有すると主張して,著作者人格権(氏名表示権及び同一性保持権)侵害を理由に本件各ゲームソフトの製造等の差止め及び損害賠償の支払を求め,同年8月3日,被告らに対し,本件訴訟を提起した。(PSソフト裁判) | |||||||||||||
このページは、パチンコ裁判の第一審判決を参考に、大幅に改訂しました。 改訂前の版はこちら。 |
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