著作権とは

最終更新日: 2010/11/09

「ヤマト」の権利関係がどうなってるのか理解するために少しだけ法律のお勉強をしたので、その成果を書き残しときます。

■ 著作物に関する権利 ■

法律で定められた財産権の一つとして知的所有権があります。
さらにその知的所有権の中に、著作物に関する権利(普通いわれる「著作権」)が含まれます。
これは著作権法によって保護される権利です。
この権利を大きく分けると

著作者人格権」 「著作権」 「著作隣接権

の3つです。

著作物にかんする権利(著作権法による)

つまり、
新聞などで一口に「著作権」といっている場合でも、実際は性質の違う3種類の権利のどれかをいっている(かもしれない)ということを念頭に置く必要があります。

■ 著作物と著作者って? ■

【著作物】

そもそも著作物とはなんなのでしょうか? まずは著作権法から引用します。

(定義)
第二条  この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、当該各号に定めるところによる。
一  著作物 思想又は感情を創作的に表現したものであつて、文芸、学術、美術又は音楽の範囲に属するものをいう。
二  著作者 著作物を創作する者をいう。
(著作物の例示)
第十条  この法律にいう著作物を例示すると、おおむね次のとおりである。
一  小説、脚本、論文、講演その他の言語の著作物
二  音楽の著作物
三  舞踊又は無言劇の著作物
四  絵画、版画、彫刻その他の美術の著作物
五  建築の著作物
六  地図又は学術的な性質を有する図面、図表、模型その他の図形の著作物
七  映画の著作物
八  写真の著作物
九  プログラムの著作物

というわけで、大体そこに挙がっているものやそれに類するものは著作物だということになります。 絵コンテやデザイン画のように完成品を作る過程で創作されたものも、上の条件を満たしていれば、それ単体で一つの著作物です。

なお、著作物というのは「思想または感情の創作的な表現」であって、その表現が記録されたメディア(紙とかフィルムとか)は著作物ではありません。 また、その表現に含まれているアイディアも著作物ではありません。
# アイディアと表現との厳密な区別というのは結構難しいんだけど

著作物にかんする権利を著作権法で保護してもらうために、どこかに申請したり登録したりする必要はありません。 これは「無方式主義」といいます。 文化庁に申請して登録することもできますが、それが絶対的な効力を持つわけではありません。

(保護を受ける著作物)
第六条  著作物は、次の各号のいずれかに該当するものに限り、この法律による保護を受ける。
一  日本国民(わが国の法令に基づいて設立された法人及び国内に主たる事務所を有する法人を含む。以下同じ。)の著作物
二  最初に国内において発行された著作物(最初に国外において発行されたが、その発行の日から三十日以内に国内において発行されたものを含む。)
三  前二号に掲げるもののほか、条約によりわが国が保護の義務を負う著作物

【著作者】

ある著作物の著作者とは、その著作物を創作した人のことです。 著作権法から該当部分をもう一度引用します。

二  著作者 著作物を創作する者をいう。

ある著作物の著作者であるための条件は、その著作物の創作という行為を行ったこと、それだけです。 著作者は、創作と同時に著作者人格権および著作権を得ます(後述)

自分が作者であるということを(とにかくどんなやり方でもいいから)証明することができれば、実際に法律的に著作者として権利を保護してもらうことができます。 前述の通り、どこかに申請したり登録したりする必要はありませんし、あえて文化庁に登録することもできます。

著作物ができたあとで著作者を変更することはできません。 いいかえれば、“著作者であること”を他人に譲ったり後から変更したりできません。 後からできるのは、せいぜい「この人が著作者だったんだね」と確認することぐらいです。

著作物に著作者の氏名・名称が表示されていれば、その人物が著作者であると推定することになっています(第14条) しかし、これはあくまでも推定であって、著作者の表示を変えることで著作者を変更できるわけではありません。

虚偽の著作者表示はむしろ著作者人格権の侵害にあたりますし、そのような表示をした著作物を売ったり貸したりすることについては懲役あるいは罰金を科すという罰則もあります(第121条)これは親告罪ではありません(第123条)

職務上の著作物や“映画の著作物”についてはそれぞれ特に規程があります(第15条・第16条)が、これについての説明は別の機会に譲ります。

■ (1)著作者人格権 ■

世間で「著作権」という場合、実際にはこの著作者人格権を指してる場合もあるみたいですが、著作権と著作者人格権は別のものなので注意しましょう。

【著作者人格権】

著作者人格権とは、著作物に反映された著作者の人格を保護するために、著作者が持つ権利です。 次の3つがあります(第18条〜第20条)

公表権・・・著作物を公表するかどうか決める権利
氏名表示権・・・著作者名の表示を決める権利
同一性保持権・・・著作物を勝手に改変させない権利

著作者に無断で著作物を改変したりすると、著作者人格権の侵害となります。 すごーくぶっちゃけていえば、
「他人のちょっかいのせいで著作者の思いが踏みにじられたり著作者のプライドが傷つけられたりしないようにしましょう」
ということみたいです。

なお、著作者人格権は著作者が“著作者であること”に由来して持つ権利です。 したがって、著作者人格権は著作者だけが持ちます。 他人に譲渡したり後から変更したりはできません。

「ヤマト」についていえば、

  • 誰を「ヤマト」の作者として表示しなくちゃいけないか
  • 「ヤマト」をいじるためには誰にお伺いを立てなくちゃいけないか

ってことです。

■ (2)著作権 ■

著作権は著作者人格権とは別のものです。
もちろん内容的にも違うけど、決定的に大きく違うのは、著作権は経済的な権利なので他人に譲渡できる(売買できる)というところです。

【著作権】

Copyright コピーライト。
著作物を独占的・排他的に支配し、利用する権利。
他人に利用を許諾したり利用料を徴収したりすることができる。
たくさんの権利に分かれている。
  • 出版権
  • 複製権
  • 上演権・演奏権
  • 上映権
  • 公衆送信権
  • 口述権
  • 展示権
  • 頒布権
  • 譲渡権
  • 貸与権
  • 翻訳権・翻案権
  • 二次的著作物利用権
この権利は他人に譲渡することができるので、著作権を持つ人(著作権者)が著作者と同一人物だとは限らない。

著作権者から使用の許諾を得ずに著作物を使用すると、著作権の侵害となる。

これまたすごーくぶっちゃけると、
「著作物を好きなだけ利用できる権利です。お金儲けも自由!」
ってことです。

「ヤマト」についていえば、ポイントはやっぱり

  • 他人に譲渡できる(売買できる)
  • 好きなだけ利用してお金儲けに使える

という二点でしょう。
以前はウエストケープ・コーポレーション(西崎氏の会社)が「好きなだけ利用」してました。 今は東北新社が「好きなだけ利用」できることになってます

著作権の一種に翻訳権・翻案権というのがありましたが、これに基づいて作られる新たな著作物が二次的著作物です。

【二次的著作物】

著作物を翻訳し、編曲し、若しくは変形し、又は脚色し、映画化し、その他翻案することにより創作した著作物をいう。

さて、マンガやアニメの作品の場合、過去の例を見ると

「続編=キャラの複製・翻案による二次的著作物」

という解釈になってるみたいです。 続編のストーリーが独自のものでも、キャラクタは元の著作物から派生したものってわけですね。
つまり、マンガ・アニメ作品の続編を作るためには、複製権や翻案権が必要なのです。

さてさて、これは著作者人格権の同一性保持権と関係してきます。

同一性保持権・・・勝手にいじらせない権利
翻案権・・・いじる権利

つまり、この二つの権利は相反するものなのです。

この二つの権利をそれぞれ別人が持って対立してしまった場合、問題が起こり得ます。 どっちの権利が勝つかはビミョーです。 著作物を製作するときの契約内容や、著作権を譲渡するときの契約内容にも左右されるため、ケースバイケース。 判例もあまり多くないみたいです。

契約などで著作権に特に制約をつけたりしてない場合、つまり著作権のフル活用が認められるような契約になってる場合なら

「著作者の人格を社会的に傷つけない限り翻案権の勝ち」

つまり、著作者の印象が悪くなるような翻案はアウトだけど、著作者が「なんだか気に入らねーぞ!」とゴネるぐらいならセーフ、ということのようです。 著作者は、もし後でゴネたい場合は、契約のときによく考えて契約内容を決めなくてはならない、ということです。

「ヤマト」の場合、著作者と著作権者が違っているので、この翻案権と同一性保持権の対立というのは結構ポイントになりそうです。 著作権譲渡契約では、西崎氏が東北新社に対して著作権やその他の権利を譲渡し「ヤマト」をフル活用することを認めていたので、それがPSソフト裁判ではポイントの一つになりました。

■ (3)著作隣接権 ■

著作者以外にも、著作物が世に出るまでにはいろんな人が活躍します。
そういう人たちの持つ権利がこの著作隣接権です。
当面の話にはあんまし関係がないので、さらっと流してください。

【著作隣接権】

単に隣接権とも。
実演者(演奏者・歌唱者など)、レコード製作者、放送事業者などが、その演技や製作物に対して有する権利。
録音権・録画権・放送権など。

「ヤマト」の声優さんたちも何らかの権利は持ってるんでしょうね。
そういえば、すごーく昔に新聞で、再放送の使用料を求めて声優さんの組合か何かがストライキを起こした、って記事を読んだよな。
# これは別に「ヤマト」に限っての話じゃないですけどね

■ まとめ ■

  • 著作者人格権と著作権は別のものです。
  • 著作者人格権は「改変させない権利」などです。著作者だけのもので、譲渡できません。
  • 著作権は「利用する権利」です。譲渡できます。
  • 続編は二次的著作物です。著作権(複製権・翻案権)と著作者人格権(同一性保持権)の両方が関連します。
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