ソロモン王の洞窟

最終更新日: 2003/11/01

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「ソロモン王の洞窟」

収録:創元推理文庫
著者:H・R・ハガード
訳者:大久保康雄
ページ数:332

アラン・クォーターメインって誰? は?「ソロモン王の秘宝」の主人公? それはB級映画か何かですか?

と思ったら、そういうレッキとした小説があるのね。 イギリスでどのくらいメジャーなもんなのかは知らないけど。。。 とりあえずeS!Booksで注文。

ちなみに、調べてみると、これ確かに映画化されたこともある。 「ロマンシングストーン・キングソロモンの秘宝」 あーそんなタイトルの映画あったけなあ、、、見なかったけど。 インディ・ジョーンズシリーズのヒットを見て二匹目のドジョウを狙った *だけの* 映画だったらしく、ネットでいくつか読んだ感想によると激しくつまらないっぽい (^^; そのわりに二作目まで作られてるんだとか。 ふーん、まあ、これは見とかなくてもいいかなあ?

[2003/08/26]

セブンイレブンに到着したんで取りに行った。 扉絵がいかにもジュブナイルな感じ (^^;

文庫の後ろのほうで見たところによると、なんか続編もいくつかあるっぽい。

[2003/09/01]

全20章のうち、序文と最初の1章だけ。 アラン・クォーターメンによる序文からして“いかにも”なネタ感があって、 オーソドックスながら結構好きかも(笑)

[2003/10/17]

4章まで。

えーっと、ソロモンといえば紀元前のユダヤの王様の名前ですね。 イスラエル王国の3代め統治者として黄金時代を築いたとか。 つーことはつまり、国民の皆さんは重い税金に苦しんだってことなんだけど。 他にもソロモン王にまつわる話としては、すごい知恵の持ち主だったとか、 シバの女王とできたとかできなかったとか、魔方陣を使って精霊を呼び出したとか、 ソロモンの印(六芒星)が現在のイスラエル国旗にあしらわれてるとか。

とにかくソロモンはイスラエルの人だったわけ。 なんでそんな人の秘宝がアフリカの奥地にあるのか? 何の疑問もはさまないままに淡々と進むストーリーが素敵だ。 イギリスの読者にとっては特に疑問でもないのかしらん? そのへんの感覚ってわからないなあ。 日本でいえば琉球王国の秘宝が徳島にあるみたいな話なんじゃねーかと思うんだけど。

さてそのストーリー。 著名な冒険家アラン・クォーターメンは、ある船上で偶然出会った二人連れ、 ヘンリー・カーティス卿(またヘンリーかよ)と退役軍人ジョン・グッド大佐に、 ヘンリー卿の弟ネヴィル(本当の名前はジョージ)を探す旅への同行を依頼される。 このネヴィル氏、どうもソロモン王の秘宝を探しに行ったきり消息を絶ったらしい。 で、この旅というのがどう考えても生きて帰れない決死行なんだけど、 著名なわりに貧乏なクォーターメンは息子ハリー(またハリーだよ)の生活保障のために 命がけで引き受けることにする。

3章でウンボパ、フェントフェーゲル、キーヴァという3人の従者を雇って一同出発。 4章では「旅の途中の冒険はぜんぶ省略」とかいいながら、その1ページ後には 「ここで一つ冒険を紹介」とかいってる適当人間なクォーターメンがまた素敵(笑) んで、その冒険というのが、

“象の群れを見かけたので、これは狩りをしないと *良心* がとがめる。 で、9頭を仕留めたけど手負いの象に従者の一人キーヴァが殺されてかわいそう”

という話。 っておい! もう明らかに余計な狩りをやったせいで犠牲になったよーなもんなんだけどね。 こいつらの“良心”って一体どういう構造してるんだろうなあ? まー現代日本人の感覚で善悪を語ってもしょーがないんだろうけどさ。。。 さておき、表紙の見返しにある登場人物紹介にも載ってるのに、 出てきたと思ったらロクな台詞もないままお亡くなりになったキーヴァさんに合掌。

著者のハガードは実際にアフリカで暮らした経験があるそうなんだけど、 この物語に出てくるいろんな植物・動物・人種・病気・社会システムなんかの描写は、 どこまでマジでどこからホラなのかよくわからないぐらい細かい。 これは絶対ネタだろうとか思ったりする描写も一部あるんだけど、自信なし(笑)

[2003/10/20]

>とにかくソロモンはイスラエルの人だったわけ。 なんでそんな人の秘宝がアフリカの奥地にあるのか? 何の疑問もはさまないままに淡々と進むストーリーが素敵だ。

と、前回こんなことを書いたんだけど、気になってもう一回読み返してみたら、 事実誤認に気づいたんで訂正。 いやいや、先入観てのは恐ろしいもんだと思ったね(汗)

最初にどっかで“アラン・クォーターメインは「ソロモン王の秘宝」の主人公” ってのを見たんだよね。 それに、この小説が映画化されたときのタイトルも「キング・ソロモンの秘宝」 だったから、てっきりこれは“秘宝”探しの話だと思ってた。 でも、実はこの小説の中にはこれまでのところ“秘宝”なんて言葉はちっとも出てこない。 クォーターメンたちが探しているのは“洞窟”なんだよね。

この小説の原題は「KING SOLOMON'S MINES」で、直訳すれば「ソロモン王の鉱山」 つまり、ソロモン王ゆかりの何かの採掘場跡があるから探そう、ってな話なのね。 日本語訳で“洞窟”といってるのは、別にソロモン王がわざわざアフリカの奥地の洞窟に 金銀財宝を隠したってわけじゃなくて、たぶん坑道みたいもんなんじゃないかしらん。

で、焦らずにちゃんと読めば「輝く石の鉱山」とか「ダイヤモンドの採掘場」とかってちゃんと書いてあるし。 これはカンペキにオレの見落としだわ。 まあ、読む前から頭の中に“秘宝”が刷り込まれてたもんだから、、、 と言い訳しとこう (^^;

ちなみに、原作小説の日本語訳では主人公の名前は「クォーターメン」なんだけど、 「リーグ・オブ・レジェンド」のWebサイトでは「クォーターメイン」になってる。 チラシでも「クォーターメイン」だし、たぶん字幕もそう。

さて6章まで読んだ。 5章では、砂漠の真っ只中で水を補給できず、一行はすっかり弱ってしまう。 アラン・クォーターメンによる描写からちょい引用:

もう砂漠を50マイルは踏破したはずだった。 シルヴェストラ老人の地図とノートの翻訳を思い出していただきたい。 砂漠は幅が40リーグで、そのほぼ中央に「汚水池」があると記されていたはずだ。 40リーグというのは120マイルだから、もしその池がほんとうに存在するものなら、 私たちは、どう考えてもすでに池まで20マイルか15マイルくらいのところまできているはずだ。(中略)
この丘は、ちょっと見ると巨大な蟻塚に似ていて、高さが百フィートばかり、 ふもとの面積は1モーゲン(2エーカー)ぐらいだった。 私たちは、ここで足をとめ、死ぬような渇きに駆り立てられて、水筒の最後の水を飲んでしまった。 飲めば1ガロンくらいはゆうに飲めただろうが、一人当たり半パイントしかなかった。

メートルとリットルを使ってくれないとさっぱりわからねえ(´・ω・`)

6章では、スプリングボクという動物の足跡を見つけて「水が近い」とかゆっときながら、 探しても見つからないと、「水の匂いがする」という従者をバカ扱いしてるクォーターメン、 再び適当人間ぶりを垣間見せてくれまふ。

「汚水池」で渇きを癒したあと、“シバの乳房”と呼ばれる二つの山の左乳房側に登り、 とうとう目指す洞窟に辿りつく。 ここで従者の一人フェントフェーゲルが力尽きて死ぬ。合掌。 んで、夜が明けてから改めて洞窟の中を見ると、誰かわからない白人の死体を発見。 さあ、これは誰なんだろう?というところで7章へ。

[2003/10/21]

創元推理文庫には必ずある、1ページめのあらすじ紹介から引用:

ソロモン王の時代から、暗黒大陸アフリカの奥地に眠り続けているという莫大な財宝。 その伝説の秘宝をもとめてヘンリー・カーティス卿は、 著名な探検家アラン・クォーターメンとともに出発した。 (以下略)

むーん、ここに「秘宝」って書いてあった。 もう何だかわからね。 中身を今まで読んだ限りでは「洞窟=ダイヤモンドの採掘抗」ってことでよさげなんだけど。

さて前回こう↓書いたけど

>とうとう目指す洞窟に辿りつく。

これはまたオレの早とちり。 6章で辿りついたのはまだ中間地点“シバの乳房”にある別の洞窟ね。 目指す洞窟は“シバの乳房”を越えてさらに“ソロモン街道”を抜けた先の山中にある。

で、9章まで読んだ。 その中間地点の洞窟にあった死体というのは、どうやら300年前に地図を書いた男、 ホセ・ダ・シルヴェストラその人であるらしい。 冷たい氷付けになって、洞窟の中で腐ることもなく保存されてたわけだな。

“シバの乳房”を越えて下へ降りていくと、そのへんの土着民の皆さんに遭遇した。 そのうちの二人はその土地(ククアナ国)の王族で、一人は王の弟インファドーズ、 もう一人は王の息子スクラッガ。 危うく殺されそうになったクォーターメンたちだけど、 相手が文明開化を迎えてないのをいいことに「星から来た」とか適当なことをいって、 王国までの道案内をさせるのだった。 土着民の皆さんが簡単にだまされてくれるのはご愛嬌ってとこかな。 ありえねー。

8章で王国に入り、9章で王ツワラに謁見。 このツワラとその息子スクラッガは悪役ってことらしい。 今のところはクォーターメンたちを客分として扱ってるんだけど。 まあお話の定石として順当にいけば、このあと一悶着って感じだろうなあ。

[2003/10/25]

ククアナ王家の家系図など:

11章まで読んだ。 ページ数にしてやっと半分を超えた。 そろそろ焦らねーと、肝心の映画の上映期間が終わっちまうよなー。。。

10/25までに読んだ9章で魔女ガグールが登場し、11章でファウラタが登場。 これでやっと表紙の見返しに挙がってる登場人物が全員揃った。 つーても3人はすでに死んでるけど(10章までは2人だったけど11章で増えた)

10章では、クォーターメン一行はククアナ国の魔女による“人間狩り”を見ることになる。 これは、10人ほどの魔女たちが霊感で探し当てた裏切り者を王が処刑するというもので、 もちろん霊感なんてあるわけないから、実態は体制維持のための恐怖政治。

これはどーもヨーロッパの魔女狩りをパロってるよーな感じ。 この小説が書かれたのは19世紀末で、イギリスでも魔女狩りが沈静化してからたっぷり 150年は経過してるはずだから、まあこういう小説でのパロディもOKだったのかしらん。 アフリカにいたという著者の経験や見聞にもとづく話だったらちと怖い。 とにかくそんなわけで「現政権はダメダメ」という印象を読者に与える仕掛けはばっちり。

11章ではいよいよクォーターメン一行が具体的な行動を起こした。 これにともなってククアナ国の内紛が表面化する気配。 このついでに助けられた美女がファウラタ。 このひと、イグノシが王座についた暁には、まーきっとその嫁にでもなるんでしょー。

なんてことを書いてるヒマがあったらとっとと読めってことだよな (^^;

[2003/10/27]

13章まで読んだ。 クォーターメン一行を加えた反乱軍は馬蹄形の丘の上に陣取った。 数で優勢なツワラ軍の攻撃に、反乱軍は地の利を活かして対抗するんだけど、 どうやらツワラ軍は正面からの攻撃は効率が悪いとみて兵糧攻めに切り替えるらしい。 こうなると補給がない反乱軍は圧倒的にヤバイんで、短期決戦を挑むのであった。

クォーターメン一行は本来はククアナ国のお家騒動なんて関係ないはずなのに、 戦争勃発のきっかけ作りで片棒を担いだばかりか、反乱軍の先頭に立って戦ってる。 なんだこいつら。。。 この冒険旅行のいいだしっぺであるヘンリー卿からして、 「もう弟のことはあきらめた。オレは戦うぞ」 みたいなことをゆってんのが清々しいっつーかなんつーか。 まあ行きがかり上イグノシ側に肩入れしたくなるのはわかるんだけどさあ。

[2003/10/28]

反乱軍勝利。イグノシは新しい王に。 そうならなかったほうがびっくりするさ、てな展開。

とにもかくにも、やっとのことで元々の目標を思い出したクォーターメン一行。 目指す洞窟があるという山に行ってみると、 その洞窟というのは遠い昔に作られたダイヤモンド鉱山の坑道らしい。 洞窟の奥には部屋があって、金貨やダイヤモンドのつまった宝箱がごろごろ。 そこでまた一悶着あって、どうにかこうにか洞窟から脱出。

えーと結局この洞窟というのは、ダイヤモンドの坑道であると同時に、 その坑道を掘った連中が、運び出さずじまいの宝石を隠した場所でもあったわけっすねー。んで、この洞窟は本当に「ソロモン王の」ものだったのかどーか? これにかんしては語り手クォーターメンははっきりと断定はしておらず、 ただソロモン王の宝物類の出所はここだったのではないかと推定するのみ。

そのあと一気に最後まで読んじまったんだけど、 まー最終的にはダイヤモンドもいくらかは持って帰ることができて、 ヘンリー卿の弟ジョージも見つかり、めでたしめでたし、と。

>このついでに助けられた美女がファウラタ。
>このひと、イグノシが王座についた暁には、まーきっとその嫁にでもなるんでしょー。

この予想は完全にハズレました。 ちくしょう(笑)

ここで読後感てことになるんだけれども。 むーん、まあ、わりと面白かったかなー。 つーかね、意外にこのページにはたくさん書いちまったんだよね(笑) 欲をいえば、 艱難辛苦を乗り越えてやっと辿りついた洞窟あたりでロマンが盛り上がるよーな仕掛けが、 もーちょい物語の中にあってもいいよーな気もする。 映画の冒険モノを見慣れた人間としては、 やっぱし最終目的地に近づくにつれてだんだん盛り上がりが増していって、 到着したところで一番ブワッときて欲しいかなあ。。。 あと、現代日本人の感覚ではなんだかミョーなところもいろいろ。 まーこりゃしょうがないね。 19世紀末当時のイギリス少年たちは、こーゆーのを読んで血湧き肉躍らせたんですかねー。

[2003/10/31]

いっこ感想を追加:

洞窟の奥にある歴代王の墓んとこの描写は、なかなか面白かった。 これは著者ハガードの見聞によるのか? 完全に空想で書いてるんなら大したもんかも知れないと思った。 ここの描写は映像化されたのを見たかったね。

[2003/11/01]

▲読了▲

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